遠回りすることで見えるものもある!

本来は、真っ直ぐ「正解」に辿り着けるのなら、こんなに楽で良いことはないでしょう。

例えば、私の仕事にしても「ここに問題がある!」と思って施術しても結果に結びつかないことも多々あります。出来るものなら「失敗」しないで「成功」へと導きたい。これは誰しもが思うことでしょう。あの世界記録保持者であるイチローでさえ打率4割は難しい。ということは6割は凡打であるという事実。6割の失敗があるからこそ4割の成功の喜びを味わえる。

現にイチロー自身がこう語っている。「失敗しないでそこへ辿り着けたとしても、作品ができたという事実しか残らない」と。そしてイチローはこう続けている。「そうやって失敗もしないで生きて来た人には深みがない」と感慨深いことも語ってる。

確かにそうだ。人の深みや味ってものは、その人が成功してきた軌跡には感じられない。いや、逆にその人が失敗や困難をどう乗り越えてきたか?のほうが重みもあるし説得力を持つものだ。失敗をすることで「どこに問題があるのか?」が見えるのである。この失敗を恐れんがために成功しかしてこなかった者には「どうすれば失敗するのか?」さえわからない。だからイチローは「遠回りしても失敗を繰り返したらいい。無駄にはならない。遠回りすることが一番の近道だ」と言い切る。成功したという事実より、失敗しながら学んだ軌跡のほうが大事なんだ!ということだろう。

さらに彼の凄いところは、野球選手という職業なのに医療従事者並みに「人体の解剖」を知ってるところにある。普通、日本人がアメリカの大リーグに渡って最初に感じるのは「体格の差」だ。現に元大リーグのピッチャーだった野茂も、香川県出身のピッチャーだった伊良部も、そして今現在ダルビッシュも体を大きくするための筋トレを行い二回りくらいデカクなっている。そうやって付けた筋肉が弊害となり自分本来の動きが出来にくくなってることに本人たちは気付いていない。イチローも渡米した直後には相当筋トレをして体を大きくしたそうだ。しかし、「何かが違う・・・」ことに早い段階で彼は気付く。そこから彼は人体の構造や解剖に興味を抱くようになる。その事を理解しながらトレーニングを重ねた結果、あの柔軟な体ができてくるのである。そして彼は私のような医療従事者でさえ感動するようなことも語ってる。「よく肩の力を抜いてリラックスして、リラックスしてって言われるけど、実は肩ではなく膝の力を抜いたら肩の力が抜けたりするんですよね~~」って。素晴らしい意見だ!全く離れた視線から人体の構造を理解しているとしか言いようがない。問題がある箇所は離れたところにある可能性を彼は理解してるのだ。

最後に彼はこんなことも言っている。「トラやライオンは筋トレはしない」。まさしく本来持っている能力を最大限に引き出す術を彼は備えているのかもしれない。是非50歳を迎えるその日まで彼には現役を続けて貰いたいです。